7月12日より台湾においてZenFone 3が発売されます。
ZenFone 3シリーズは今回よりデザイン的にフラットな背面処理になり、より高級感を感じる仕様になりました。更にCPUにはハイエンドモデルを使いながら本体価格はかなり手ごろになってコストパフォーマンスの良い機種という特性も継続させています。
ZenFone 3シリーズは通常のZenFone 3に加えてDeluxeやUltraといったサイズの違う機種の投入が日本でも予定されています。より大画面でのゲームや情報端末として使いたいユーザーにとってこのZenFone 3シリーズは注目に値するでしょう。
さてこのZenFone 3シリーズ、今回はコストパフォーマンスの良さ以外にも注目されている点があります。それが3G/4Gの同時待ち受けに対応したデュアルSIMを採用しているという点です。実際にこのモデルが日本に投入されるかどうかというのはまだわからないものの、少なくとも台湾版はこの3G/4Gの同時待ち受けを実現しています。
日本発売モデルでもこのデュアルSIMが採用された場合、これまでのSIMフリースマホの使い方が大きく変わってきそうです。今回はZenFone 3シリーズから期待される3G/4Gの同時待ち受けのデュアルSIM、デュアルスタンバイの特性について詳しく説明しようと思います。
デュアルSIMスマホとは?そのメリットは?
そもそもデュアルSIMスマートフォンというのはどういうものなのでしょうか。
これはその名の通り、2枚のSIMカードを一つのスマートフォンで使えるという機能です。
海外では一般的なSIMフリースマホに良く見られる仕様で、音声通話をキャリアの通話定額プランとして残しながら、ネット用の回線として格安SIMを使うというような運用をすることが出来ます。これによって契約は異なるものの、2つの契約に分けることで通信料の節約や使うキャリアのSIMを比較的自由に選べるというメリットが生まれます。
海外旅行者なんかだと片方に国内で使っていた音声回線を入れておいて、もう片方を現地のプリペイドSIMでネットを可能にしながら着信も対応できるような使い方をしている人もいます。
一つのスマートフォンで2つの契約を同時に使えるということで、特に2台持ちをしているような人はこのデュアルSIMスマートフォンは非常に便利なものになるでしょう。
デュアルSIMの今までは2G/4G
今回ZenFone 3シリーズのデュアルSIMスマホが3G/4Gの同時待ち受けが期待できるということで注目されていますが、実は今までもデュアルSIMスマホというのは上記のように登場していました。それがなぜ今回に至って更に話題を集めているのでしょうか。
その理由は今までのデュアルSIM対応スマホでは、日本国内では現状全く意味をなさない2G/4G(3G)の同時待ち受けしか対応していなかったからです。片方がLTEの待ち受けをしている場合に、もう片方は2Gという通信方式でしか使えないようになってしまいます。
この2Gというのは日本においては既に停波しているmovaに相当する古い通信規格であり、利用できるような環境がありません。そのためこれまでのデュアルSIMスマートフォンは、2枚のSIMを一つのスマホに入れることはできましたが、日本では音声とデータでの同時待ち受けは音声側が3G(WCDMA)に対応していないために出来ておらず、2枚のSIMを入れることは出来ても使えるのは1枚づつのみというほとんど意味をなさないものになっていました。
これまでの日本でのデュアルSIMはシングルSIMとほとんど変わらない使い方で、2枚のSIMカードを内部で切り替えて使える、というぐらいのメリットしかなかったためにデュアルSIMだからといって何か使い方が変わるようなことはありませんでした。
3G/4G対応のデュアルSIM機がZenFone 3シリーズ含めて登場
そんな使い方が限られていて惜しい機能になっていたデュアルSIMですが、いよいよ日本国内でもフル活用できる3G/4G同時待ち受けに対応した機種が出て来ています。
それが今回のZenFone 3シリーズであり、現在発売されているハイエンドモデルのデュアルSIM端末です。ZenFone 3シリーズ以外に3G/4Gの同時待ち受けに対応しているのは、Galaxy S7シリーズやXiaomi Mi5、それにXperia X Performanceといった機種です。
これらがなぜ今回3G/4Gの同時待ち受けに対応できたのかというと、搭載されているSoCであるSnapdragon 820というCPUが3G/4Gのデュアルスタンバイに対応したモデムを内蔵しているからです。要はメーカーの機能性が拡充されたというのではなく、CPUがようやく対応できる状態になったために各メーカーのハイエンドスマホが揃ってデュアルスタンバイが可能になったということになります。
今回のZenFone 3シリーズでもSnapdragon 820を搭載しているモデルは「Deluxe」は確定しているので、この機種のデュアルSIMモデルならばほぼ3G/4Gの同時待ち受けが可能と見ていいでしょう。
デュアルSIMの実際の動作
具体的にこの3G/4Gの同時待ち受けが可能なデュアルSIMがどういう動作をするのかを確認してみましょう。
ZenFone 3発売前に既にSnapdragon 820搭載のXperia X Performanceを購入して、実際にデュアルスタンバイの挙動というものを試してみましたので、そちらをレビューしていきたいと思います。
まずXperiaの場合はSIMスロットが2つありますが、2つのSIMスロットを利用した場合にはmicro SDカードが使えなくなるので注意してください。こちらはZenFone 3シリーズを含めた各スマホでも同様の問題が予想されます。
SIMを2枚いれ、APNを設定するとどちらも通信/通話が可能な状態になりますが、どちらのSIMカードをその通信/通話で優先的に行うのかという設定が可能です。
この時通話と通信の担当を別々のSIMカードに任しても今回のデュアルスタンバイスマホならば日本国内でも問題なく可能になっており、片方のSIMで通信をしながらも片方のSIMではいつでも通話を受けれる状態になっています。これが今までの2G/4G待受だと、通信中はもう片方での通話待受が一切機能せず、電話がかかってきたこともわからなければ通話をすることさえもできず、通話をするにはSIMの切り替え動作を毎回する必要がありました。3G/4G待受ではその手間がいらなくなります。
SIMカードの優先設定を行ったら、あとはほとんど普通の環境でスマホを利用できます。ただ通話と通信が別々のSIMカードで使えるという「嬉しい」違いはありますが。
実際に別々の通話/通信設定の時に、ネットをしながら着信がとれるかを試してみました。ネット接続中に着信が入るとダウンロード通信は一旦止まってしまいますが、通信とは別のSIMカードで着信することが可能でした。
デュアルSIMをようやく日本でも最大限に活用できる環境が整ったということで、ZenFone 3シリーズが日本でデュアルSIM展開となった暁には、非常に便利な使い方がこれから利用できるということになりそうです。仮に国内でデュアルSIMモデルの販売がなくても、Xperia X Performanceのように海外モデルを輸入することで対応することが可能です。
想定される使い方
キャリアの通話定額またはガラケープラン+格安SIMのデータプラン
実際にこのデュアルSIMスマホが広がることで、想定される使い方というものを考えてみましょう。
まず一つがキャリア回線を手放したくないけど格安SIMの料金が魅力だと感じているような人に良いと思います。
最近はキャリアの長期契約優遇サービスが開始したことにより、せっかく長年契約してきたキャリア契約をやめてしまうを躊躇している人も多いと思います。かといって格安SIMの料金というのは非常に魅力的なものですから、こちらも求めてみたい人にはキャリアに残るか格安SIMに移るかは悩ましい選択です。
そんな人にこのデュアルSIMスマホがあれば、その2つの要求を満たしてくれることになるでしょう。
キャリア回線をガラケー向けのプラン、もしくは通話定額のみの音声プランを契約することで、通話料の基本料金をパケットを除いた形に構成します。大体これが1,000~2,000円で済ませることが出来ます。パケットプランが本来ならばこれに3,000~6,000円レベルでかかってきますが、これを外したプランでキャリア回線を維持します。
そしてパケット通信部分を格安SIMのデータプランで賄います。本来3,000~6,000円近くするキャリアのパケット料金も、MVNOのデータプランならば900円ほどから契約することが可能ですし、キャンペーンによっては無料で利用できるものも存在しているために、大きく節約を実現することが出来ます。
これならキャリアに戻りたい、戻れるような予算環境になったという時にも、契約継続期間を維持したまま安い料金で使うことが出来ます。格安SIMのデータプランは解約金もない場合がほとんどであるため、安くありながらも自由にキャンペーンを乗り換えながら契約を継続することが可能となっています。
格安SIMの音声プラン+別の格安SIMのデータプラン
もう一つデュアルSIMスマホでの活用法としては、既に格安SIMの契約へとMNPなどでのりかえた人にもメリットがあります。
格安SIMの弱点は速度が非常に不安定な点です。毎日時間帯によって速度が違いますし、毎月速度が良いMVNOというのも変わってきます。
そのため格安SIMの音声プランに乗り換えた場合、時期によって非常に遅い状態で使い続けなければいけない羽目に陥ってしまう場合が多々あります。
例えば楽天モバイルなんてその筆頭ではないでしょうか。楽天モバイルは楽天ポイントが使えたり貯まったり、5分間の通話定額などの高い利便性がある格安SIMのプランを提供していますが、肝心の通信速度がスピードテストブーストや帯域制御などによって良いものでは決してありません。そのため楽天モバイルとの契約を後悔する声も多いのは事実です。
しかし楽天モバイルを音声プランで契約した場合には、1年間の解約金に縛られることになってしまい、気軽には別のMVNOへの乗り換えが出来なくなってしまいます。
これは今まででしたら解約金がなくなるタイミングまで待たないと無駄なお金を支払う必要があったのですが、デュアルSIMスマホが出てきたことにより、楽天モバイルの回線を最低の200kbpsの料金プランにして最低維持で音声プランに設定、別の通信速度が良い格安SIMを契約してデータプランに設定することで、それほどの出費を増やさずに快適な通信環境を復活させることが出来ます。
このように格安SIMの音声プランを特性やデメリットも知らずに契約してしまった人でも、デュアルSIMスマホを活用することで少しの出費でストレスを軽減させることが出来ます。
もちろん楽天モバイル以外でも音声プランを契約してしまって速度が遅くなった格安SIMを使っている場合に有効的な方法になります。
ZenFone 3シリーズ含むデュアルSIMスマホは今後要注目
ZenFone 3シリーズはZenFone 3がSnapdragon 625、ZenFone 3 DeluxeがSnapdragon 820、ZenFone 3 UltraがSnapdragon 652となっており、この内デュアルSIMスタンバイ(3G/4G同時待ち受け)がほぼ確定しているのはZenFone 3 DeluxeのSnapdragon 820モデルのみで、残りの2つについては要実機確認が必要です。
まだまだ確認が要する点もありますが、このZenFone 3 Deluxeに含まれるデュアルSIM機能というのはこれからの日本のモバイル環境を更に快適にさせる可能性を秘めているので、日本国内での販売状況や対応状況といったものを注目していく価値はあるかと思います。
またZenFone 3に限らずGalaxy S7やXperia X PerformanceのSnapdragon 820機種のデュアルSIMを海外から輸入することで、国内販売を待たずともこの便利なモバイル通信環境での利用が可能になります。
コストパフォーマンスではZenFone 3シリーズのほうが良いですが、こういった選択肢もあります。国内からだとエクスパンシスが安心して購入できるショップになるでしょう。台湾版なども今後発売が始まってくるかと思われます。
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